-Local Active-learning project 田中朋弥 2021
Qなぜ長谷部研究会に入ったのですか?
また、数あるプロジェクトの中からどうしてLAPを選んだのかということを教えていただきたいです。
2年生の秋学期からLAPに所属しました。LAPに入った背景としては、SFCで接する周りの人達と自分を比べて自信を失っていた事がきっかけとなっています。1年生の時私は自分の軸ややりたいことがなく、自分と周りを比べて自分を卑下していた日々が続いていました。自分と同じ様な状況で苦しんでいる人の状況を解決する手段として教育があるのではないかと考え、教育に興味を持つようになり、自信や教育、発達心理学について理論を深めながら学ぶ今井研究会に入りました。今井研究会で論文を読みながら基礎研究をしていく中で、実践を通して学びたいと思う様になり長谷部研究会を志望しました。いくつかプロジェクトがある中でもLAPを選んだ理由としては、中学生以上の年齢の子どもの教育に興味を持っていたことと、今まで自分が触れてこなかった地域との協働という所に興味を惹かれたからです。
長谷部研究会に所属した当初は、正直カルチャーショックをとても受けました。今井研究会にいた時は、理論をひたすら追求していくのが研究会のあるべき姿だと思っていました。しかし、長谷部研究会では「自分と向き合いながら自分のやりたいことを考えていく」ということが活動の割合として大きく、前の研究会とのギャップに戸惑っていました。しかし今は、そこから反転して「長谷部研大好き人間」になっています。なぜそうなったのかというと、長谷部研究会で無意識に自分が求めていた成長や学びがたくさん得られたからです。その中でも自分にとって最も良かったのは、「自分が何をしたいのか」「自分の強みが何か」を知る事ができたということです。
LAPの活動の中で、大きなきっかけがありました。フィールド先である開田高原に2か月ほど滞在して、中学生に対する学習支援を行っていた時のことです。学習支援の中で、その当時学校に通うことに苦手意識を感じていた中学生と関わりを持ちました。大学生の学習支援や休み時間のコミュニケーションを通じて、その生徒は大学生との時間をとても楽しんでくれるようになりました。そこから学習支援にも毎日きてくれるようになり、その中学生は学習支援だけではなく、学校に通うようにもなりました。その中学生から「大学生がいたから今の自分がある」と最後の学習支援の時に言ってもらえ、そのご両親からも「娘を救ってくれた」という言葉を頂きました。それが自分にとって今までの人生の中で1番嬉しく、自分の強みや自分のやりたい事を深く実感し、自分に自信を持てるようになった経験でした。そこから、LAPの活動に価値を感じ始め、こういった活動をSFCや他の大学に広げ残していきたいと考えるようになりました。そういった経緯から、現在はプロジェクトでは主にLAPの価値の言語化と外部発信に取り組んでいます。
QLAPの魅力と開田高原のオススメスポットを教えてください。
プロジェクトとしての魅力と、フィールド先の魅力2つがあると思っています。プロジェクトとしての魅力は、「中学生の豊かな教育機会」に向けて、自ら働きかける直接的なアプローチと仕組みづくりを行う間接的なアプローチの両方ができることです。LAPは、中学生に向けた活動だけでなく、地域に住んでいる方々とも積極的に関わり幅広く活動をしています。具体的には、地域自治会や行政の方を始めとする地域の大人と大学生でコミュニケーションを取り、子どもたちへの想いをすり合わせながら地域の中学生を中心にワークショップや学習支援を行っています。そういったプロジェクトの特徴から、目の前の中学生を見て動く小さな視点と、地域全体の教育に向けた仕組みづくりを目指す大きな視点の両方を持ちながら動くことができます。大学生が起点となり、様々なセクターの方々の置かれている状況や想いを考慮しながら巻き込み、目の前の中学生に還元していく。そのような活動を通じて、目の前の中学生や地域の変化が少しずつ、しかし大きく変わっていく感動を味わえることが、私にとってのLAPの魅力です。
フィールドの魅力は、フィールド先で関わる人と開田高原の美しい景色です。
まず人についてですが、皆さん、よそ者である私達にとても温かく接してくださるし、内面的な美しさとユーモアを持っている方が多く、私はそこにとても惹かれています。例えば、中学生の運動会では最高学年の3年生が全力でふざけます。リレーで「よ〜い、どん」の合図がかかると、示し合わせたように皆銃で打たれたフリをしてから走り始めます。それを保護者や学校、地域の方は笑いながら温かく見守っています。その光景を見て、子ども含め大人もそういったユーモアを大切にしていのだと感じ惹かれました。風景については、観光スポットに行かなくても車で移動している最中に見る山や空の景色がとても綺麗です。私は、開田高原に行くといつも綺麗な景色を見て豊かな気分になります。晴れた日の夜に見える星空も絶景です。
開田高原の中でおすすめの場所は、「ドイツトウヒの森」という場所です。2019年の冬に滞在した時に開田高原にあるパン屋さんの奥さんに教えて頂いた知る人ぞ知るスポットです。映画の世界のような美しい木々の並びにうっとりします。ぜひ1度訪れてみて欲しいです。
Q2020年度に、LAPの皆さんが行ってきた活動について教えてください。
普段は地域の方との活動と中学生との活動の2軸で行っていましたが、今年は中学生との活動がメインとなる年度でした。その中でも、今年行った1番大きな活動としては、学校の総合的な学習の時間を頂いて大学生が授業をさせてもらったことです。去年から学校の総合の時間に大学生も関わらせて頂くことになったのですが、今年に入ってより学校の先生方との連携がより強化されたと感じた活動でした。2020年度が始まった当初に、「現地に伺えないのならオンラインで定期的にコミュニケーションを取りましょう」と提案し、学校との定例ミートを長谷部先生とプロジェクトメンバーで行っていました。定例ミートをきっかけに総合の時間を頂いて授業をさせて頂くという流れになり、中学校の総合的な学習の時間の元々の意図を踏まえ、LAPメンバーで考えた異文化自文化理解のワークショップを行いました。テーマは「コンゴ人留学生に自分達が思う開田高原の魅力を知ってもらうにはどんな交流プログラムを行なったらいいか」というもので、中学生が普段は考えない自分が住む地域の文化や魅力に気付いたりコンゴ民主共和国の文化を知ることができたりと、異文化自文化に対して視野を広げるきっかけをつくることができたと思います。このワークショップは学校の先生方にも手応えを感じて頂き、今後も学校との連携体制を築いていく上でとても大きな動きとなりました。
もう1つの中学生との活動は、オンライン学習支援です。夏と冬に週3〜4回行いました。今年の学習支援では、これまでの自習のサポートに加え、大学生の講義とカウンセリングを新たに行いました。これまでは現地で直接生徒に向き合っていたからこそ自習で分からない部分の対応や目標の管理などができたものの、コロナの影響でオンラインになってからそれが非常に難しくなり、私達ができることが極端に減ってしまいました。そこからオンラインでもどう大学生が中学生の勉強に役立つ事ができるか、また中学生とコミュニケーションを取ることができるかを考え、勉強のやり方についての講義と勉強についての悩みを聞くカウンセリングを取り入れることにしました。夏冬とやってみて、講義に対する中学生の反応が良かったり、実際に成績が伸びたという声を多数もらうことができました。初のオンラインでの試みということでとても不安でしたが、オンラインの中でも中学生の勉強面に寄与する事が出来、コミュニケーションをしっかり取ることができたと手応えを感じることができた活動でした。
地域の方との活動については、地域でアクションを起こしたいと思っている方々とオンラインコミュニケーションを通じてより濃い関係性を築くことができました。これまで関わりが少なかった地域の方と定期的にミーティングをしてこれからの関わり方を模索したり、これまで関わらせ頂いている地域の方々とオンラインミーティングやオンライン飲み会を行ったことは、来年度以降の大学生と地域の連携から生まれるアクションを起こしていく上でとても重要なステップになったと考えています。また、11月から2月にかけてプロジェクトメンバーの1人が現地に長期滞在をして学校や地域の方々と積極的にコミュニケーションを取っており、その活動も地域との関係性を紡ぐ上でオンラインでは補いきれない部分を担ってくれたと考えています。
Qコロナ禍で一年活動していて、感じた変化を教えてください。
感じた変化はポジティブなものとそうでないものの2つあります。
1つは、相手と繋がりやすくなり、少ないコストで定期的にコミュニケーションを取る事が可能になったというポジティヴな変化です。covid-19の感染拡大により、ズームを始めとしたオンラインでの交流が地域の方々と可能になりました。それにより、それまで交通費や移動時間などのコストにより制限されていた日常的な交流ができるようになったのです。私達大学生が対面で現地の方に会いに行くには、1回の開田高原と新宿の往復で1人あたり4000-8000円程、時間で言うと丸1日掛かります。実際に伺って話す事の価値も大きいですが、これでは頻繁には伺えず、特に大学生が伺うのが難しい平日のみしか稼働していない学校とのコミュニケーションでは課題を感じていました。そういった課題が、covid-19の思わぬ影響で解決され、今では学校の先生方と話す時は決まってズームで行なっており、その頻度もオフライン時代に比べて増えています。
2つ目のポジティブでない変化は、大学生にとって「”互いにコミュニケーションを取った”という実感を感じにくくなった」という事です。covid-19の感染拡大が始まってからは、中学生を含めた現地の方々とのコミュニケーションはほとんどオンラインで取ってきました。オンラインではオフラインの様に相手から得られる情報量が少なく、どうしても「同じ場を共にしている感覚」を感じる事が難しくなります。それにより交流の中に”実感”を見出しにくくなり、長谷部研生にとって重要な学びである活動の中で見出す「自分についての学び」が薄れてしまいます。「自分が何に当事者意識を抱いているのか」「自分の強みは何なのか」という自分についての学びが薄れると、目の前のフィールドに対してどうしていきたいかを描く事が難しくなってしまいます。私自身、LAPの活動をしていてこれまで感じていた様なやりがいを感じる瞬間が少なくなっており、それにとても苦しんでいました。現在ではその課題に対して、コミュニケーションの際に双方に役割を持たせたり、互いの色々な情報を”見える化”する事を意識したりして、「手触り感のあるコミュニケーション」を作り出す事に注力しています。ゆくゆくはオンラインの良さを生かしながら、オフラインに負けない手触り感を感じられる様な状態を目指しています。
Q最後に、LAPに興味を持って頂いている学生の方に一言お願いします。
LAPは関わる対象や活動の幅が広いため、一見「何をやっているプロジェクトなのかよく分からない」と思われる方も多いと思います。そんなLAPを一言で表すと「豊かな教育機会を作るためにオールラウンドに動く集団」です。大学生自ら中学生に教育活動をするプレイヤー的な役割もしながら、持続的に教育に向けたアクションが地域で行われていくための仕組みづくりも行っていく。中学生に向けた教育活動も、ただワークショップで視野を広げるだけでなく、自分が生きたいように生きるために必要な学力を身に付けられる学習支援を行う。中学生の豊かな教育環境のためにできる事を全力でやっているプロジェクトです。そのため、中学生の変化を目にして思いがけず感動したり、自分の奥底にある教育への想いを再認識する、そんな瞬間が必ず味わえるはずです。豊かな教育機会について考えを深めたい人、仕組みづくりに興味がある人、現場を見ながら大きな課題を解決していきたい人に、LAPはとても合っていると思います。ぜひ、興味がある方は一緒に活動しましょう。プロジェクトのツイッターやWEBサイトもあるので、気軽に連絡してくれると嬉しいです。